相談事例

2018.01.25更新

池袋西口城北法律事務所の弁護士の結城です。

今回は,私が弁護団の一員として,地位確認訴訟(解雇無効による復職)を2回の期日でスピード解決し,解決金500万円を獲得した事例を報告したいと思います。

ご依頼者様(以下「X氏」といいます。)は,2013年頃から会社(以下「Y社」といいます。)から給料を減額されていたところ,2014年頃から上司Aから人格を否定されるような暴言を繰り返されるようになりました。加えて,Xは,Aの意に沿わない言動をしたということを理由に,始末書の提出も繰り返し求められるなどしました。

このような取り扱いに耐えられなくなり,X氏は,Y社に対して,Aによるパワハラの中止や基本給減額分の支払い等を求める上申書を提出しました。ところが,Y社は,この上申書の提出を受けて,X氏の就業状況が著しく不良で就業に適しないことを理由に解雇しました(以下「本件解雇」といいます。)。

その後,X氏は,労働組合に所属し,団体交渉を継続してきましたが,団体交渉での解決は無理と判断し,法廷で闘うべく当事務所に相談にいらっしゃいました。そして,私を含む,城北法律事務所の3名の弁護士が受任しました。

早期解決可能な労働審判を選択する途もありましたが,主張立証を十分に尽くすことのできる裁判を選択することにしました。

提訴前の打ち合わせにおいて,X氏が事前に詳細なメモを持参し要領よく事案を説明する姿勢や,取引先から営業姿勢について高く評価する手紙が出ていたことから,弁護団は,X氏の就業状況が著しく不良で就業に適していないというY社の言い分は,間違っていると即断できました。

訴状においては,解雇無効(復職時までの賃金の支払いを含む。),未払い賃金,退職強要及びパワーハラスメントに対する慰謝料請求(使用者責任)を軸に,それぞれ証拠に基づいて,克明に事実を主張していきました。

そうしたところ,第1回期日において,Y社代理人から,訴状の請求額を丸呑みする形で,復職ではなく会社都合による退職とする和解案を出してきました。とにかくこの場で和解をしてくれと懇請するY社代理人を,裁判官が「そうもいかないでしょう。」と押しとどめてくれました。

一度持ち帰り,X氏と協議した上で,訴状の請求額丸のみとなる500万円での和解することとなりました。

このように,訴状の請求額丸のみとなる500万円での和解となった理由は,Xの誠実な働きぶりが,証拠に基づいた事実として訴状に克明に現れていたからだと思います。

X氏は10年以上働き続けたY社に愛着があり,営業の仕事もやりがいを感じていました。ですから,なおも悔しい気持ちもあったと思いますが,事件後にはすっきりしましたと喜んでいただけました。

弁護士 結城 祐

東京都豊島区西池袋1-17-10エキニア池袋6階城北法律事務所

電話 03-3988-4866

投稿者: 弁護士 結城祐

2018.01.18更新

東京都豊島区池袋の弁護士の結城祐(ゆうき たすく)です。

下記の件の弁護活動概要

1日目 警察署留置係から接見要請,受任,謝罪文作成,勤務先に連絡,被害者と示談,親族から身柄引受書受領,勾留取消請求書作成

2日目 東京地方裁判所に勾留取消請求書等の提出,勤務先に連絡

3日目 勾留取消し決定,身柄釈放

ある日曜日,勾留先の警察署の留置係から,被疑者が私に依頼したいといっていると電話がありました。接見に行くと,「逮捕後勾留前まで依頼していた当番弁護士が動いてくれなかったため勾留されてしまった」,「このまま勾留が長引けば勤務先から解雇されてしまうかもしれない。早期に釈放してもらうべく弁護活動をしてもらいたい。」とのことでした。

被疑者との会話から,被疑者に謝罪文を作成しもらい,被害者との示談ができれば,勾留の理由又は勾留の必要性がなくなったとして勾留が取り消されるべき事案だと判断しました。

そこで,接見前に事前に用意していた便せんを差し入れ,被疑者との会話を通じて謝罪の言葉を引き出し,接見当日に謝罪文を作成しました。また,その日のうちに被害者とアポイントメントを取り付け,示談書を交わしました。さらに,その日の夜には被疑者の母に身柄引受書に署名押印をしていただき,勾留取消請求書を作成しました。

そして,翌日に裁判所に勾留取消請求書を提出し,翌々日には裁判官から交流の必要性がないとして勾留取消の決定が出ました(最終的に不起訴処分)。
この間,逮捕からは5日程度経過していたため,被疑者からの要望もあって,勤務先に連絡をして,何とか早期に釈放するから処遇についてはお待ちいただく様に連絡をしました。その結果,処遇については待っていただくことになり,早期に釈放された結果,解雇されずに済みました。

本来であれば,検察官からの勾留請求に対して裁判官が却下することを促す弁護活動がなされているべき事案でしたが,私が受任する前の当番弁護士が適切に弁護活動をしなかったため,勾留されてしまい,勤務先から解雇されるおそれが生じてしまいました。
接見後,被疑者からお話を伺い,事案を分析し,勾留取消しにより早期に身柄釈放される見込みがある事案だと考え,それを目指した弁護活動をすることになりました。私は,接見後にすぐに弁護活動に動けるように,接見前から便せん等必要書類を用意して接見に向かうようにしております。本件も,初回接見中に謝罪文を作成できました。
なお,勾留取消しに関していうと,平成26年5万5914人で,請求により勾留が取り消された被告人はわずか94人,被疑者を足しても151人にとどまります。年々早期の身柄釈放が奏功する事案が増えておりますが,勾留取消しは一般的には難しいケースといえるかと思います。

弁護士 結城 祐(ゆうき たすく)

東京都豊島区西池袋1-17-10エキニア池袋6階(スタバの隣のビル)城北法律事務所

TEL03-3988-4866

豊島区,練馬区,板橋区,北区,文京区他都内,埼玉県,神奈川県,千葉県,群馬県,栃木県,山梨県

投稿者: 弁護士 結城祐

2018.01.17更新

東京都豊島区池袋の弁護士の結城祐(ゆうき たすく)です。

逮捕されてしまったら,すぐに弁護士にご一報ください。ご依頼が早ければ早いほど,早期の釈放と身分の安定につながります。私自身,ご依頼いただいた案件について早期に駆け付け対応した結果,10日間の勾留をされずに釈放することができております。

下記の件の弁護活動概要

1日目 逮捕 当番弁護での接見要請,通訳人と待ち合わせをして接見,謝罪文作成(途中),勾留請求却下を求める意見書(途中)

2日目 接見,謝罪文(日本語訳含む。)完成,意見書の完成

3日目 日本人知人男性の身柄引受書作成,意見書を裁判所に提出,検察官の勾留請求却下,身柄釈放

今回は,そのような事案の中でも日本語の拙いアジア系の外国人の刑事事件(外国人の被疑者の迷惑防止条例事件(痴漢))の例です。その被疑者は,日本に来てから間もなかったこともあって,派遣された通訳の方と,午前11時頃接見室に入り,初回接見をしました。

被疑者からお話を伺うと,友人と電車を乗り継いで飲んでいたが,酔った勢いで,帰宅途中の見知らぬ女性の胸を触ってしまったとのことでした。そして,事実は認めるものの,就労先に解雇されては困るので,早期に釈放してもらいたいとのことでした。

被疑者からお話を伺い,裁判所が原則10日間の勾留決定を出さないように弁護活動をする必要があると考えました。

刑訴法上,留置された被疑者について,被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に検察官に被疑者を送致しなければならないことになっています(法203条1項)。

そして,検察官が被疑者を受け取った時から24時間以内,かつ被疑者が身体を拘束(逮捕)されてから72時間以内に裁判官に勾留請求又は公訴の提起をしないときには,直ちに被疑者を釈放しなければならないとされています(法205条。なお,204条参照)。

すなわち,被疑者は,身体を拘束されてから,72時間以内に勾留請求又は公訴提起されることになります。

裁判官が,勾留の理由(法207条1項,法60条)がないと判断すれば,検察官の勾留請求は却下されて釈放されることになりますが(後述),身柄拘束されてすぐに適切な弁護活動がなされないと,原則10日間の勾留決定が出てしまいます。そして,最初の3日間で釈放できれば職場への言い訳も立ちますが,10日間も勾留されてしまえば職場への言い訳も難しくなってきます。

加えて,勾留後にも不服申立て手続き(準抗告など)もありますが,ある裁判官が勾留理由があると考えて出した勾留決定を,別の裁判官が覆すのですから,相応の理由づけが必要になります。すなわち,なかなか不服申立ては認められないのです。

ですから,身体拘束されてすぐに適切な弁護活動がなされて,早期に釈放される必要があります。

では,勾留前の弁護活動とは何でしょうか。これについては,刑訴法上,勾留後の準抗告のようには規定が置かれておりません。

しかしながら,前述の勾留の理由との関係が問題になります。

すなわち,勾留の理由とは,

①被疑者が定まった住居を有しないとき

②(釈放されたとすれば)被疑者が罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき

③被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき

になります。

そのため,検察官から勾留の請求があっても,勾留の理由がなければ,裁判官は勾留請求を却下することになり,被疑者は釈放されます。

勾留前の弁護活動とは,この勾留の理由がないことを意見書と資料を基に裁判所に伝える作業になります。

そして,事案にもよりますが,多くの事案では,①被疑者が定まった住居を有しないということはありませんし,また③被疑者が重い罪から逃れるために逃亡することも考えられません。

そのため,②罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかないかを資料と共に主張することになります。特に,被疑者が証拠を本当に隠すことができるのかどうかという観点から考えることになります。

上記事案に沿って考えると,被疑者が,女性の胸を触ってしまったという事案ですので,有力な証拠は女性の供述になります。そうすると,考えられる罪証隠滅行為は,その女性の供述を脅迫等によって変遷させる,すなわち脅迫によって,胸を触られたといったが嘘であった(あるいは人違いであった)と警察官や検察官に供述させることというのが考えられます。

しかしながら,被疑者は,たまたま飲んでいた先で,見知らぬ女性に痴漢行為に及んでしまったので,被害者の氏名,住所,電話番号を把握しておりません(この類の事案ではそのようなことが多いと思われます。)。また,被疑者の勤務先と被害女性に加害に及んだ場所が重なることはありませんでした。

そこで,私は,意見書に被害者の氏名等を知らずに出会うことはないことを,被疑者の勤務先のHPなどと合わせて,意見書を作成しました。

さらに,通訳の方にも協力していただき,初回接見中に本人に書いてもらった謝罪文を通訳の方に渡し,翌日午前11時頃の2回目の接見の時に日本語訳版を受領致しました。

これらを基に意見書や資料を作成し,翌々日の午前中に東京地方裁判所に提出したところ,午後3時20分には釈放になりました。

このように迅速に対応した結果,逮捕から3日以内に釈放することが出来ました。

もちろん,被害女性のことも考え,被疑者に対しては,今後二度とこのようなことに及ばないようにお灸をすえるということも忘れません。今後は飲酒を控えるということを約束してもらいました。

なお,被害女性との間で示談が成立し,最終的には不起訴となりました。

この事件は,通訳の方を介在させてコミュニケーションを取らざるを得ず,慎重を期して行っていたため,通常であれば初回接見の時に被疑者との会話を通じて,謝罪を促し謝罪文を完成させますが,通常よりも完成までに時間を要しました。もっとも,最終的には日本人の被疑者の場合と同じようにまとめあげることができました。

刑事事件はスピードが命です。もしご自身やご家族が逮捕されてしまったら,早期に弁護士にご連絡下さい。

東京都豊島区西池袋1-17-10エキニア池袋6階(池袋西口スタバの近く)城北法律事務所

弁護士 結城 祐(ゆうき たすく)

投稿者: 弁護士 結城祐

2018.01.17更新

東京都豊島区池袋の弁護士の結城です。

少し前の話ですが,当事務所の近くに宝くじ売り場があって,高額当選者がよく出現するらしく,2017年の年末も長蛇の列ができていました。今年もそんな時期かと思いながら,事務所に向かっていると,友人からラインが来ました。

友人からは最近結婚したとの報告が来たので,おーおめでたいと思い祝福の言葉を送ろうとした時,次のような質問が重ねて送られてきました。

「聞きたいことがあるんだけどさー。俺が宝くじ買うじゃん,あたるじゃん,そのお金は夫婦のお金になるの?」

!?!?!?

タイミングも良かったですし,色々突っ込みどころはありますが,是非,友人にはこのまま幸せでいてもらいたいものです。

さて,私の友人の質問は,次のように言い換えられると思います。

すなわち,「婚姻後,宝くじで高額当選してから離婚する場合には,そのお金は夫婦共有財産になって財産分与の対象になるの?それとも私の特有財産(こっちが強め)?」です。

婚姻期間中に形成された財産は,原則として全て夫婦共有財産となり,離婚する際にはそれを分ける(財産分与)というのが原則です。そうすると,友人の質問の場合にも,原則夫婦共有財産になるように思います。

実際に,宝くじの場合ではありませんが,夫が自分の小遣いから購入した万馬券が当たって,それを元手に生活の本拠たる不動産を購入した事例に関する裁判例(奈良家庭裁判所平成13年7月24日)があります。

この裁判例では、馬券購入資金が共有財産から支出されていること、その後不動産が夫婦の協力で維持されていたことから、特有財産ではなく、夫婦共有財産になるとしたものです。もっとも、馬券のように射幸性の高い臨時収入については、購入者の運によるところが大きいから、妻の生活扶助的な要素を考慮しても,妻に給付されるべき割合が3分の1に留まると判示しました。

このように判示された理由については,下記のとおりになります。

まず,共有財産か特有財産かについてですが,「万馬券は夫婦の婚姻中に購入されたものであるし,本件物件はもともと夫婦及び家族の居住用財産として購入され,現に12年もの間夫婦の生活の本拠として使用されたものであること,万馬券というのは射幸性の高い財産で必ずしも相手方(夫)の固有の才覚だけで取得されたものともいえないこと,万馬券が相手方(夫)の小遣いで購入されたものであるとしても,小遣いは生活費の一部として家計に含まれると考えることが出来ること」を理由に,高額万馬券を元手に購入した不動産は特有財産に当たらないとしました。

他方で,分与割合については,「万馬券という射幸性の高い臨時の収入については相手方の寄与が大きいことを認めるべき」として,妻側の割合を3分の1としました。

この裁判例からは財産分与の理由である,財産形成への夫婦の協力維持,がポイントになりそうといえると思います。すなわち,不動産の維持に妻の協力があったことが重視されて夫婦共有財産になるとの判断になったのではないかと思います。これを前提とすれば,個人の婚姻前からの蓄えから購入したら宝くじが当たって,そのまま貯蓄していた場合には,上記裁判例と異なり、特有財産との判断が出る可能性はあるのではないかと思います。

弁護士 結城 祐

東京都豊島区西池袋1-17-10エキニア池袋6階(池袋西口スタバ近く)城北法律事務所

TEL:03-3988-4866

企業法務,労働,離婚,刑事,一般民事

 

 

 

投稿者: 弁護士 結城祐