東京都豊島区池袋の弁護士の結城祐(ゆうき たすく)です。
逮捕されてしまったら,すぐに弁護士にご一報ください。ご依頼が早ければ早いほど,早期の釈放と身分の安定につながります。私自身,ご依頼いただいた案件について早期に駆け付け対応した結果,10日間の勾留をされずに釈放することができております。
下記の件の弁護活動概要
1日目 逮捕 当番弁護での接見要請,通訳人と待ち合わせをして接見,謝罪文作成(途中),勾留請求却下を求める意見書(途中)
2日目 接見,謝罪文(日本語訳含む。)完成,意見書の完成
3日目 日本人知人男性の身柄引受書作成,意見書を裁判所に提出,検察官の勾留請求却下,身柄釈放
今回は,そのような事案の中でも日本語の拙いアジア系の外国人の刑事事件(外国人の被疑者の迷惑防止条例事件(痴漢))の例です。その被疑者は,日本に来てから間もなかったこともあって,派遣された通訳の方と,午前11時頃接見室に入り,初回接見をしました。
被疑者からお話を伺うと,友人と電車を乗り継いで飲んでいたが,酔った勢いで,帰宅途中の見知らぬ女性の胸を触ってしまったとのことでした。そして,事実は認めるものの,就労先に解雇されては困るので,早期に釈放してもらいたいとのことでした。
被疑者からお話を伺い,裁判所が原則10日間の勾留決定を出さないように弁護活動をする必要があると考えました。
刑訴法上,留置された被疑者について,被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に検察官に被疑者を送致しなければならないことになっています(法203条1項)。
そして,検察官が被疑者を受け取った時から24時間以内,かつ被疑者が身体を拘束(逮捕)されてから72時間以内に裁判官に勾留請求又は公訴の提起をしないときには,直ちに被疑者を釈放しなければならないとされています(法205条。なお,204条参照)。
すなわち,被疑者は,身体を拘束されてから,72時間以内に勾留請求又は公訴提起されることになります。
裁判官が,勾留の理由(法207条1項,法60条)がないと判断すれば,検察官の勾留請求は却下されて釈放されることになりますが(後述),身柄拘束されてすぐに適切な弁護活動がなされないと,原則10日間の勾留決定が出てしまいます。そして,最初の3日間で釈放できれば職場への言い訳も立ちますが,10日間も勾留されてしまえば職場への言い訳も難しくなってきます。
加えて,勾留後にも不服申立て手続き(準抗告など)もありますが,ある裁判官が勾留理由があると考えて出した勾留決定を,別の裁判官が覆すのですから,相応の理由づけが必要になります。すなわち,なかなか不服申立ては認められないのです。
ですから,身体拘束されてすぐに適切な弁護活動がなされて,早期に釈放される必要があります。
では,勾留前の弁護活動とは何でしょうか。これについては,刑訴法上,勾留後の準抗告のようには規定が置かれておりません。
しかしながら,前述の勾留の理由との関係が問題になります。
すなわち,勾留の理由とは,
①被疑者が定まった住居を有しないとき
②(釈放されたとすれば)被疑者が罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
③被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
になります。
そのため,検察官から勾留の請求があっても,勾留の理由がなければ,裁判官は勾留請求を却下することになり,被疑者は釈放されます。
勾留前の弁護活動とは,この勾留の理由がないことを意見書と資料を基に裁判所に伝える作業になります。
そして,事案にもよりますが,多くの事案では,①被疑者が定まった住居を有しないということはありませんし,また③被疑者が重い罪から逃れるために逃亡することも考えられません。
そのため,②罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかないかを資料と共に主張することになります。特に,被疑者が証拠を本当に隠すことができるのかどうかという観点から考えることになります。
上記事案に沿って考えると,被疑者が,女性の胸を触ってしまったという事案ですので,有力な証拠は女性の供述になります。そうすると,考えられる罪証隠滅行為は,その女性の供述を脅迫等によって変遷させる,すなわち脅迫によって,胸を触られたといったが嘘であった(あるいは人違いであった)と警察官や検察官に供述させることというのが考えられます。
しかしながら,被疑者は,たまたま飲んでいた先で,見知らぬ女性に痴漢行為に及んでしまったので,被害者の氏名,住所,電話番号を把握しておりません(この類の事案ではそのようなことが多いと思われます。)。また,被疑者の勤務先と被害女性に加害に及んだ場所が重なることはありませんでした。
そこで,私は,意見書に被害者の氏名等を知らずに出会うことはないことを,被疑者の勤務先のHPなどと合わせて,意見書を作成しました。
さらに,通訳の方にも協力していただき,初回接見中に本人に書いてもらった謝罪文を通訳の方に渡し,翌日午前11時頃の2回目の接見の時に日本語訳版を受領致しました。
これらを基に意見書や資料を作成し,翌々日の午前中に東京地方裁判所に提出したところ,午後3時20分には釈放になりました。
このように迅速に対応した結果,逮捕から3日以内に釈放することが出来ました。
もちろん,被害女性のことも考え,被疑者に対しては,今後二度とこのようなことに及ばないようにお灸をすえるということも忘れません。今後は飲酒を控えるということを約束してもらいました。
なお,被害女性との間で示談が成立し,最終的には不起訴となりました。
この事件は,通訳の方を介在させてコミュニケーションを取らざるを得ず,慎重を期して行っていたため,通常であれば初回接見の時に被疑者との会話を通じて,謝罪を促し謝罪文を完成させますが,通常よりも完成までに時間を要しました。もっとも,最終的には日本人の被疑者の場合と同じようにまとめあげることができました。
刑事事件はスピードが命です。もしご自身やご家族が逮捕されてしまったら,早期に弁護士にご連絡下さい。
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弁護士 結城 祐(ゆうき たすく)