相談事例

2018.01.17更新

東京都豊島区池袋の弁護士の結城です。

少し前の話ですが,当事務所の近くに宝くじ売り場があって,高額当選者がよく出現するらしく,2017年の年末も長蛇の列ができていました。今年もそんな時期かと思いながら,事務所に向かっていると,友人からラインが来ました。

友人からは最近結婚したとの報告が来たので,おーおめでたいと思い祝福の言葉を送ろうとした時,次のような質問が重ねて送られてきました。

「聞きたいことがあるんだけどさー。俺が宝くじ買うじゃん,あたるじゃん,そのお金は夫婦のお金になるの?」

!?!?!?

タイミングも良かったですし,色々突っ込みどころはありますが,是非,友人にはこのまま幸せでいてもらいたいものです。

さて,私の友人の質問は,次のように言い換えられると思います。

すなわち,「婚姻後,宝くじで高額当選してから離婚する場合には,そのお金は夫婦共有財産になって財産分与の対象になるの?それとも私の特有財産(こっちが強め)?」です。

婚姻期間中に形成された財産は,原則として全て夫婦共有財産となり,離婚する際にはそれを分ける(財産分与)というのが原則です。そうすると,友人の質問の場合にも,原則夫婦共有財産になるように思います。

実際に,宝くじの場合ではありませんが,夫が自分の小遣いから購入した万馬券が当たって,それを元手に生活の本拠たる不動産を購入した事例に関する裁判例(奈良家庭裁判所平成13年7月24日)があります。

この裁判例では、馬券購入資金が共有財産から支出されていること、その後不動産が夫婦の協力で維持されていたことから、特有財産ではなく、夫婦共有財産になるとしたものです。もっとも、馬券のように射幸性の高い臨時収入については、購入者の運によるところが大きいから、妻の生活扶助的な要素を考慮しても,妻に給付されるべき割合が3分の1に留まると判示しました。

このように判示された理由については,下記のとおりになります。

まず,共有財産か特有財産かについてですが,「万馬券は夫婦の婚姻中に購入されたものであるし,本件物件はもともと夫婦及び家族の居住用財産として購入され,現に12年もの間夫婦の生活の本拠として使用されたものであること,万馬券というのは射幸性の高い財産で必ずしも相手方(夫)の固有の才覚だけで取得されたものともいえないこと,万馬券が相手方(夫)の小遣いで購入されたものであるとしても,小遣いは生活費の一部として家計に含まれると考えることが出来ること」を理由に,高額万馬券を元手に購入した不動産は特有財産に当たらないとしました。

他方で,分与割合については,「万馬券という射幸性の高い臨時の収入については相手方の寄与が大きいことを認めるべき」として,妻側の割合を3分の1としました。

この裁判例からは財産分与の理由である,財産形成への夫婦の協力維持,がポイントになりそうといえると思います。すなわち,不動産の維持に妻の協力があったことが重視されて夫婦共有財産になるとの判断になったのではないかと思います。これを前提とすれば,個人の婚姻前からの蓄えから購入したら宝くじが当たって,そのまま貯蓄していた場合には,上記裁判例と異なり、特有財産との判断が出る可能性はあるのではないかと思います。

弁護士 結城 祐

東京都豊島区西池袋1-17-10エキニア池袋6階(池袋西口スタバ近く)城北法律事務所

TEL:03-3988-4866

企業法務,労働,離婚,刑事,一般民事

 

 

 

投稿者: 弁護士 結城祐